新人研修合宿 オリエンテーリング(5) 倒立


「倒立をしたいので・・足を支えてもらえますか・・お願いします」

 待ってましたとばかり吉田と中島が一歩前へ出た。早苗は深く気落ちしながらも地面に手をつき、思い切って両足を空中へ蹴り上げた。

 勢いが弱かったため地面へ逆戻りしそうになったが、吉田が強引に早苗の足首をつかんで上へ引っ張り上げた。
「きゃっ!」
 早苗の悲鳴をよそに、反対側に立っている中島も足首をつかんで早苗を空中へと引っ張り上げる。

 二人の男子社員に左右の足首をつかまれ、まるで逆さ吊りのような形で倒立は完成した。それは予想通りの破廉恥な光景だった。

 早苗のテニスウェアは逆さまに大きくめくれ上がり、胸の膨らみに引っ掛かってかろうじて着衣姿を留めていた。だがそれ以外は腹部も下腹部も、すべて丸出しの状態となっていた。

 生白い腹部は呼吸に合わせて艶かしく上下し、丘に上げられた魚がのたうつように見えた。下腹部に張り付いた紐パンは薄っすら汗ばんでおり、剥き出しの生尻もやはり汗で濡れている。ところどころ赤みが差しているのは、先ほど地面に座り込んでいた跡だろう。足首をおさえる吉田と中島は放心状態で、眼前にさらけ出された美しい柔肌をむさぼるように見入った。

「は、早く・・秒数のカウントをお願いします・・」
 早苗が早くも苦しそうな声で黒坂に催促した。
「じゃあ数えるから、ずっとその姿勢をキープすること。イーチ・・ニーイ・・」
 黒坂のゆっくりとしたカウントが始まった。

 早苗はそれほど腕力がないが、補助役の吉田と中島が強引に足首を引っ張り上げており、今のところ腕の負担はそれほど感じられない。不幸中の幸いではあった。

 だが時を経ずして、その足首の付け根に痛みが生じて来た。吉田も中島もむやみに馬鹿力で足首をつかんでいるからだ。

 早苗は足首の痛みに耐えかねて口を開いた。
「吉田くん、中島くん・・足首の力をちょっと緩めて欲しいの・・」
「あ、ごめん、痛かった?」
 吉田が悪びれもせず訊き返した。
「うん、痛いといってもちょっとだけだから・・」

 早苗の台詞が終わらない内に、吉田がいきなり握力を緩めた。しかも少しだけ緩めるのではなく、完全に力を抜いたのが問題だった。今まで吉田の腕力で支えられていた早苗の体重が、一気に早苗自身にのしかかって来たのだ。
「きゃっ!」

 心の準備ができていなかった早苗は、突然の出来事に両腕をガクガク震わせてバランスを失いそうになった。身じろぎして体勢を立て直そうとするが、慣れない逆立ち状態では上手くいかない。
「ああっ・・!」
 今にも倒立が崩壊しそうになり、早苗は悲鳴を上げた。

「おっと危ない!」
 吉田があわてて握力を入れなおした。のみならず、早苗の太ももへと手を伸ばし、付け根あたりから丸ごと両腕で抱え込んだ。まるで抱き枕でも抱くような恰好である。バランスを安定させるための咄嗟の判断ではあったが、どさくさ紛れに太ももの肌触りも堪能していた。

(えっ?なに?・・)
 自分の太ももが突然抱きかかえられて早苗は困惑したが、吉田はさらに中島にも指示を出した。
「おい中島、そっちも同じようにバランスを取れ!」
 中島は言われた通りに、もう片方の太ももを丁寧に両腕で抱きしめた。肌の感触を楽しむように少しずつ位置をズラした後、太ももの付け根あたりでしっかり腕を固定する。ようやく倒立が安定感を取り戻した。

 結果として早苗は、二人の男に左右で太ももを抱え込まれ、逆立ちのまま大股開きの体勢になった。
(い、イヤ・・)

 パンティの食い込んだ股間が大空に向けて全開となり、恥ずかしい部分をことさらに強調する体勢だが、ガッシリと太ももを抱えられているため身動きはままならない。強制的な羞恥ポーズに早苗は赤面して耐えるしかなかった。

 吉田と中島は太ももをガッチリ固定したまま、その付け根あたりにそれとなく手を這わせては、いたいけな早苗の肌を撫でさすった。白く熟れた太ももは蕩けるように柔らかく、指先に吸い付いてきた。脚の付け根は大股開きのためにピンと張り詰め、小刻みに震えているのが可愛らしい。この体勢は偶然の結果だが、身動きの出来ない獲物をいたぶる快感を2人は感じていた。

「おいおい、あんまり開き過ぎると目のやり場に困るよ。まったく早苗ちゃんも大胆だなあ。まあ、本人が見せたいんだったらいいけどさ」
「やだー、早苗ちゃんって露出趣味?でもあんまり変なポーズを取られて事故につながると監督責任者として困るわよ」

 順子と黒坂が交互に侮蔑的な言葉を投げつける。もちろんその声は早苗の耳にも入ってくるが、必死に倒立を続けているので、まともな反論が出来る状況ではない。

 その時、順子が思い出したようにリュックの中から小さな機械を取り出した。黒坂がカウントを中断して順子に尋ねる。

「池下先輩、なんですかそれ?」
「ビデオカメラよ。オリエンテーリングの最中に事故でも起きたら、状況を報告しないといけないでしょ?それで記録用に持って来てたの。ちょうど早苗ちゃんのポーズが危なっかしいから、参考までに記録しておこうと思って」

「や、やめて下さい!」
 早苗がその会話を聞いて悲鳴を上げた。しかし順子はそ知らぬ顔でハンディカメラを構え、倒立する早苗にピントを合わせた。

「えーとこれがズームボタンね。えいっ・・へー、最近のビデオって解像度が高いのね。折角だから一番目立つ部分をアップで撮っておくわね」

 ビデオカメラには大開脚させられた早苗の股間がありありと映し出された。産毛の一本一本まで映り込むほど鮮やかな解像度だった。その羞恥映像は、ビデオカメラ内臓のハードディスクにデジタルで保存されていく。

「はい、早苗ちゃん、こっち向いて」
 順子に突然呼びかけられて、早苗は倒立したまま必死に順子へと顔を向けた。するとカメラを構えた順子が視界に入った。

「いやっ!撮らないでください!」
「ダメよ。だって、下半身だけ撮ってても誰だか分からないでしょ?それじゃ記録の意味ないじゃない。早苗ちゃんだってことを分かるように顔も撮っておかないとね。あ、そうだ、ついでに自己紹介してくれる?そしたら記録として完璧だから」
「そ、そんな・・」

 まるで滅茶苦茶な言い分だったが、この状況で順子と言い争うだけの体力的・精神的な余裕は、早苗にはなかった。とにかく順子の言う通りにするより他にない。

「え、営業部の谷村早苗です・・年齢は22歳です・・」
「え?それだけ?自己紹介なんだからもっと自分をアピールしないと。趣味とか将来の夢とか何でもいいのよ?言っとくけどこの自己紹介は3分の中にカウントしないから、ちゃんと言い終えるまで続けるわよ。じゃあもう一度、所属部署から言い直しね。あと笑顔でハキハキと喋ること」

「・・え、営業部所属の谷村早苗です・・年齢は22歳です・・しゅ、趣味は・・あの・・クラシックなどの音楽鑑賞です。ドビュッシーやショパンなどのピアノ曲が好きです・・将来の夢は・・」

 下着を露出させた大股開きの状態で、社内きっての清純派である谷村早苗が「趣味」だの「将来の夢」だのを笑顔で語る姿・・それはまったく現実離れしたものだった。まるで過激なイメージビデオを見ているような錯覚を呼び覚ました。

 男性陣が言い知れぬ興奮を覚える中、順子だけは物足りなそうに早苗を見ていた。そして何か気づいたようにふと呟いた。

「ちょっと自己紹介をストップして」
「は、はい・・」
「早苗ちゃん、笑顔はいいんだけど、なんか無理してるっていうか、苦しそうじゃない?」

 こんな状況で無理やり笑顔を作らされ、しかも倒立して体力も消耗しているのだ。苦しくない訳がない。早苗は順子の言葉を、内心で腹立たしく思った。

 だが順子は全く予想外のことを言い出した。

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