新人研修合宿 オリエンテーリング(6) タオル


 一呼吸おいて順子が口を開いた。

「早苗ちゃん、もしかして服のサイズがキツいんじゃないの?」

 今さら何を、と早苗は少し腹立たしく思った。ボディラインが普通以上に強調されたこのテニスウェア姿を見れば、サイズが合っていないことは一目瞭然だ。しかしそのことと、いま逆立ち状態で苦しいことは関係がない。

「この服がキツイのはおっしゃる通りです、でも・・」
「ごめんなさい、もっと早く気づくべきだったわ。早苗ちゃんの体のサイズを知らないで勝手に服を選んだのが失敗だったわね。あらかじめサイズを訊いておけば良かったわ。本当にごめんなさい」
「いえ、そんな・・」

 思いがけずも順子に謝罪されて早苗は口ごもった。

 すると順子は何も言わずリュックの中を探って、汗拭き用のタオルを一枚取り出した。黒坂にビデオカメラを手渡して撮影続行の指示を行なった後、早苗たちの方へ近づいて来た。早苗は小さな不安を抱いた。

(何をする気なのだろう・・)

 順子は早苗の真正面に立ち止まり、大開脚した股間をマジマジと見つめた。

「へー、あらためて間近で見るとすごい迫力ね。こんなに食い込んでて何もハミ出してないのは奇跡かもよ。ねえ、早苗ちゃんってヘアは薄い方なの?」
「え・・?そ、そんなこと・・言えません・・」

 下品な質問に戸惑いつつも生真面目に返答する。こんな状況でも礼儀正しさを失うまいとすることが、余計に順子たちの嗜虐心を刺激している事実には気づいていなかった。順子はニヤリと笑みを浮かべて言った。

「まあいいわ。こんなに食い込んでると苦しいでしょうから、緩めてあげるね」
「え?」

 順子はおもむろに早苗のパンティに手を伸ばし、右側に結ばれているリボンに指をかけて、スルスルと結び目をほどいて行った。リボンをほどき切ると、余った紐がそのまま垂れ下がった。

「せ、先輩、何するんですか!」
 紐パンのリボンがほどかれたことを察知して、早苗は悲鳴を上げた。

 順子は聞く耳を持たず、右側に続いて左側のリボンにも指をかけた。今度は焦らすようにゆっくりとほどいて行く。この光景に釘付けの吉田と中島、それに黒坂が構えるビデオカメラにわざと見せ付けるような時間のかけ方だった。

「ああ・・やめて下さい・・」
 早苗がか細い声をもらすが、順子は手を止めない。やがて左側のリボンも完全に結び目を失った。順子が手を離すと、余った紐がダランと垂れ下がった。

 左右の腰紐が完全にほどかれたパンティは、股間に掛けられた単なる布切れと化した。隙間から不穏な空気が流れ込むのが否応なしに分かる。生地を固定する紐が無くなった以上、少し風が吹けば簡単にめくれ飛んでしまうだろう。想像するだに恐ろしく、早苗は小さく体を震わせた。

「どう、早苗ちゃん?キツそうな紐をほどいてみたんだけど。少しは楽になったんじゃない?」

 ぬけぬけと言ってのける順子に、早苗は返す言葉が見つからなかった。あまりの状況に上手く言葉が出てこないのだ。その時、黒坂がビデオカメラを構えたままで言った。

「確かに楽になったと思いますけど、早苗ちゃん何だかすっごく汗をかいてますよ。拭いてあげた方がいいんじゃないですか?風邪をひかれたら困るし」
「あら、そうね。ちょうどタオルもあることだし、そうしましょうか。でも下半身は丸出しだから拭きやすいけど、上半身はテニスウェアを着ててちょっと邪魔ね」
「脱がしちゃえばいいんじゃないですか?」
「そっか。黒坂くん、アッタマいいー」

 申し合わせたような会話を交わし、順子は早苗の胸元に手を伸ばした。胸の隆起にひっかかっているテニスウェアに手をかける。
「いやっ!」
 思わず発した悲鳴にも平然として、順子は丁寧にテニスェアを捲り上げていった。

 ライトブルーのブラジャーが姿を現した。両肩の紐を首の後ろで結び、両脇の紐を背中で結ぶタイプのものだった。ブラジャーというより水着に近いだろう。しかも早苗のバストサイズより一回り以上は小さく、豊満な乳房が収まり切っていなかった。膨らみの上半分が柔らかくひしゃげて、カップからこぼれ出しそうになっている。

「イヤァ・・見ないで・・」
「あら、こんな大きなバストしてて、本当は見せびらかしたいんじゃないの?」

 順子は捲り上げたテニスウェアを早苗の首から引き抜いて、地面に落とした。早苗に抵抗の術はなく、完全な下着姿を皆の前に晒すことになった。

 ようやく準備の整った順子は、手にしていたタオルで早苗の体を拭き始めた。首筋から始まって、脇の下、鎖骨、胸の谷間、腹部、脚の付け根、太ももなどを丹念に拭っていく。それと同時に、さり気ない手つきで早苗の体を撫でさすり、敏感そうなポイントを刺激していった。

 最初はただくすぐったそうにしていた早苗だが、段々と息が乱れ始めた。

 今まで感じたこともない不思議な感覚がせりあがっては、小波のように引いていく。全身の性感帯を刺激されている以上、当然の反応ではあったが、性経験のない早苗には全く未知の感覚だった。

 押し寄せる快感の波を必死に抑えようとするが、順子は手を休めず早苗の官能を刺激した。
 「あ・・ん・・」
 思わず口をついて出てしまった喘ぎ声に、早苗は慌てて口を閉じ、恥じ入った表情を浮かべた。

 その様子に順子はほくそ笑む。
(ふーん、けっこう感じやすいのね早苗ちゃんって。じゃあ、ここはどうかな?)

 順子はいったん手を止めて、汗拭きタオルを大きく広げ、早苗の股間へ掛けた。次いでタオルの下からパンティを一気に引き抜く。

「!!」

 一瞬の出来事だったが、何が起きたかは明白だった。早苗の顔から血の気が引いた。まるで洗面所にタオルでも掛けるように股間にタオルが掛けられ、代わりにパンティを剥ぎ取られたのだ。布地面積でいえば紐パンよりマシだが、まがりなりにも衣類を剥ぎ取られたショックの方が大きかった。

「ここも拭かなきゃいけないから、パンティはしばらく預かっておくわね。しかしこの恰好ってなんか不思議だわー。逆立ちして股間をタオルで隠すなんて、ちょっとした芸術じゃない?せっかくだから黒坂くん、記念撮影しといてよ」

 すると即座に黒坂は、ビデオカメラのズームをひいて早苗の全身像を映し出した。

 社内一の清純派である谷村早苗が、セミヌードで逆立ちし、大股開きの痴態を晒している・・その絵づらはどこか非現実的だ。だがその上、早苗の股間から垂れ下がるのは安っぽい汗拭きタオルなのだ。あまりにもシュールであり、滑稽きわまりない姿と言えた。

 黒坂は早苗の周りを360度まわって、あらゆる角度からその恥ずかしい姿をビデオに収めていった。

 撮影しながら黒坂が呟いた。
「しかしこの格好、面白いなあ。営業課の他の連中にも後で見せてやろうかな」
「や、やめてください!」
 早苗が悲鳴を上げる。

 すると順子が後を受けて言った。
「そうよ、黒坂くん、やめなさいよ。タダで見せるのはもったいないわ。早苗ちゃんのこんな恰好だったら、みんな喜んでお金払うわよ」
「ち、違います!そういう意味じゃなくて・・」
「アハハ、分かってるわよ。冗談だってば。あくまで事故が起きた時の記録用ビデオだから、何も起きなければオリエンテーリングが終わった後で破棄するわ」
「は、はい・・」

 順子の言葉を鵜呑みにして、早苗はかろうじて安堵の溜め息をもらした。
(良かった・・後でちゃんと破棄してもらえるんだわ・・)

 今直面している状況が恥ずかしいのは変わらないが、この場さえ何とかやり過ごせば・・と早苗は無理に気持ちを奮い立たせた。

 その時だった。順子がタオルの上から、そっと早苗の股間を指でなぞった。

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